
肺がんと向き合うために 編集 WJTOG広報部 (2004.3.15発行)
「がんと向き合うということ」
---セカンドオピニオンで後悔しない治療----
御注意
この記録は平成15年11月16日に大阪市のMIDシアターにおいてNPO西日本胸部腫瘍臨床研究機構が朝日新聞社と共催した市民公開講座「朝日肺がんフォーラム-肺がんと向きあうために」の討議録です.内容は平成15年11月16日の時点で最新のことが述べられていますが,その後新たな知見が加わり状況が変わっている場合もあります.統計学的な数字や根拠は複数にわたるものがあり,その中から講演者が適切と判断した報告や論文を引用しており,他の報告を一部異なる場合もあります.また限られた情報と時間内での講演であり,講演内容が十分に講演者の意を尽くしてわかりやすく述べられていないこともあります.より詳細なお問い合わせなどは、現在受診されている担当医の先生にお聞きくださることをお勧めします.
テーマ:肺がんと向きあうために
「がんと向き合うということ」
---セカンドオピニオンで後悔しない治療----
エッセイスト 逸見 晴恵 いつみ はるえ
私は「がんと向き合うということ」というテーマをいただきましてお話しするのですが,私の場合は当然,患者の立場からお話しいたします.主人をがんで亡くしてからあっという間に10年が過ぎてしまいました.10年前は,がんになっても公にはせず,そっと治療をする,人知れずそっと死んでいく,そんな時代ではなかったでしょうか.主人ががんであることを会見し,がんであることが公になり,それ以来マスコミにも取り上げていただいて「死に方に問題があったんじゃないか」といわれるようになり,それ以来皆様にも関心が深まっていったように思います.そして10年間私なりにも勉強しました.4年前からは私の関わっている雑誌がありまして「月刊がん-もっといい日」という雑誌なんですが,ここに「逸見晴恵のちょっとおじゃまします」という私のコーナーを設けていただいています.大勢の専門家の先生のお話を聞き,また有名な方でがん患者さんやその家族の方々と対談し,本当に色々なことを教えていただきました.そんな中で,つくづく思うことがあります.10年前に主人が胃がん手術をした当時は,医者に従えば大丈夫というおまかせ医療がほとんどでした.主人は自分で調べるということはせず,医者に全てを任せて,最後の手術は13時間にも及ぶ大手術を受けました.後からあの大手術は無駄だったのではないかといわれ,残された家族はずっと後悔することになりました.そして,つくづく患者自身が治療法を調べ医者を選ぶべきだと考えるようになりました.これからは,がん治療を患者自身で選び,オーダーメードの治療をする時代だと思います.患者自身が,日頃から医療に関心を持ち,勉強していくことで後悔せずに済むのではないかと考えるようになりました.先ほど専門家の先生のお話にもありましたが,はじめてがんといわれると本当に「がーん」となって頭の中が真っ白になってしまい,何がなんだかわからなくなります.この際に助けとなるのがセカンドオピニオンです.ただし,先ほどから講演しておられる先生方は皆,進歩的な考え方で,「どうぞセカンドオピニオンを求めてください」とおっしゃっておられますが,現実はなかなかそうではないと思います.あちこち講演に行くのですが,そこで皆さんから,「すみません,違う先生の意見を聞きたいんですけど」とは,なかなか言えないとお聞きします.そうしたらどうしたらいいのとよく聞かれますが,嘘も方弁といいます.「友達に医者がいます.その友達が写真とカルテを見たいといっておりますので,写真とカルテを出してください」と嘘をいうわけです.カルテ開示は法制化されておりませんが,本人が言っているわけですから,主治医の先生も,カルテと写真を出してもらえますので,実費を支払って借りてくるのです.それを持って別の先生に診てもらいます.違う意見を言われ、またわからなくなれば、サードオピニオンを受けるくらいの心構えを持たねばなりません.その結果,医者の意見が2対1とか3対0とかになりますので,そこで自分で選択すれば,自分で選んだのだから亡くなっても仕方がないという気持ちになって,後悔することはなくなります.
セカンドオピニオン,サードオピニオンがどうしても受けられない場合には,どうしたらいいか,これについて伺った話を紹介したいと思います.それは代理人制度という方法です.医療知識のある人を代理人にたてて,一緒に診察を受けるという方法です.いわば弁護士のような役割をしていただくわけです.これなら代理人は医療の専門家ですので何度も分かり易く納得いくまで説明を受けられ,十分に納得して治療を決めることができるでしょう.制度としての導入を決める時期かも知れません.こういう制度を利用して,私たちが知恵をしぼって賢く治療を受けることが大事だと思います.
主人を亡くした1年後,私もがんがないかどうか調べなければならないということになって健康診断を受けた結果,IB期の子宮頸がんが見つかりました.初めてお目にかかった先生にすべてを委ねる気にはなれず,「セカンドオピニオンを聞きたいんですが」と申し出たところ,その先生は進歩的な先生でプレパラートとカルテをいただきました.しかし,建前でセカンドオピニオンと言ってみたものの,どこの病院にかかっていいのか分からないものですから,がんに詳しい友人に紹介してもらって別の先生にセカンドオピニオンを受けました.もう一度検査をしてみないとわからないと言われ,検査を受けた結果,最初の病院と同じ結果を得ました.そこで入院しようかなと思いましたが,もっと納得しようと,その後さらに別のクリニックでサードオピニオンも受け,そのクリニックからさらに婦人科がんの専門病院を紹介してもらいました.その結果同じ意見でしたので,気持ちをしっかり固めたのです.そしてセカンドオピニオンを受けた病院で入院することを決めたのですが,本を買ってそこの病院のことをもっと詳しく調べました.そして治療を受け,10年経った現在もこうして元気にしております.こうして自分で納得して治療を決めたのだから,助からなくても,周りも「本人が納得して自分で決めたのだからいいじゃないか」ということで,後悔はしないわけです.ですから,「おまかせ医療ではなくて,自分で選んで納得して治療を受けましょう」と申し上げたい,自分自身が10年経って思うのです.
手術するかしないかも大きな選択です.私は手術しても1年未満の延命なら拒否,3年くらいの延命なら手術しようと思います.5年生きられるのなら手術をして良かったと実感できると思います.手術をしても数ヶ月の余命なら,強い意志をもって手術を断るのも大切なことだと思います.私の主人もそうでしたが,男性の方がなかなか断れないようです.自分でしっかりした考えをもって選ぶことが大切なのです.数%しか助からない手術に賭けるばかりが選択肢ではありません.最近は温熱療法や免疫療法などさまざまな代替療法もあります.手術以外の方法でがんと共存していく可能性にかけるのも選択のひとつではないでしょうか.
個人または病院で患者さんのために情報提供するために利用するのは構いませんが,書籍,雑誌等への蔵書の無断転用はご遠慮ください.
WJTOGではできるだけ多くの皆さんにがん情報を提供すべく,市民公開講座のビデオを作製し配布中です.
(平成16年12月1日)