WJTOG図書室 蔵書No.04-5-3

〜肺がん患者さんと向き合うということ〜 編集 WJTOG広報部 (2004.9.15発行)

パネルディスカッション

〜患者さんのサポート〜質疑応答


御注意
はじめに
 この記録は平成16年5月2日に大阪市のMIDシアターにおいてNPO西日本胸部腫瘍臨床研究機構が朝日新聞社と共催した市民公開講座「朝日肺がんフォーラム-〜肺がん患者さんと向き合うということ〜」の討議録です.内容は平成16年5月2日の時点で最新のことが述べられていますが,その後新たな知見が加わり状況が変わっている場合もあります.統計学的な数字や根拠は複数にわたるものがあり,その中から講演者が適切と判断した報告や論文を引用しており,他の報告を一部異なる場合もあります.また限られた情報と時間内での講演と質疑応答であり,回答者の答えが十分に回答者の意を尽くしてわかりやすく述べられていないこともあります.より詳細なお問い合わせなどは、現在受診されている担当医の先生にお聞きくださることをお勧めします.

テーマ:〜肺がん患者さんと向き合うということ〜

パネルディスカッション

田辺:次に,肺がんという病気そのものについていくつか質問があります.平成15年5月に手術をされた方ですが,今後再発しないための心構え教えて欲しい,あるいは再発を防ぐためには何に気をつけて過ごせばいいでしょうか.このように再発に対する不安が何人もの方からでています.

中村:この答えは,絵門さんが先程から何度もおっしゃっている通りなんです.そんなことは気にしないで前向きに生きるのが一番だろうと思います.ただし,肺がんということに限定しますと,タバコを吸っておられた方は禁煙しましょうという一言に尽きると思います.

澤:このご質問の方は手術をしておられます.もちろん再発しないようにすることも大切なんですが,私たちが手術をされた方が退院する際に必ず伝えることは,感冒をひかないようにしてください,ということです.よく感冒をこじらせて肺炎になるといいますが,両方の肺を持っておられる方は,肺炎で命を落とすことは少ないですが,肺がんで片方の肺を取ってしまわれた方は,肺炎で命を落としてしまうことがあるんですね.せっかく肺がんを治療したのに肺炎で命を落としては元も子もないので注意しています.それと,再発しないように注意していても不幸にして再発することは十分にあり得ます.その時に早めに治療ができるように,治療を受けている病院でレントゲン検査や血液検査を定期的に受けるように言われていると思います.少なくとも手術後,1年,2年と規則正しく検査を受けて欲しいと思います.

田辺:江口先生はどうですか.

江口:あまり付け加えることはないんですが,澤先生の言ったように,1年,2年,3年,4年とだんだん年数が経っていくうちに何もなければ,がんは治ったと考えていっていいと思います.最初の1年から3年ぐらいまでの間は再発する可能性もありますので気をつけていかれたらよいと思います.実際には定期的な通院の指示があると思いますので,それに従っていただけたらと思います.

田辺:澤先生,風邪をひかないようにするにはどうしたらいいんですか.

澤:本当に常識的なことで,医師が特別に言うことではないのですが,普段患者さんに注意していることは,お風呂上がりに夜更かししないでくださいね,とか,買い物や電車の中など人混みの多いところではマスクをしましょう,とか,ありきたりのことですが,うがいをしましょうといったことを,必ずお伝えしています.

田辺:絵門さんは再発どころではなくて,闘病中ですが,どうでしょうか.

絵門:乳がんの場合は,肺がんとは違うのでしょうが10年経っても安全とは言えなくて,もともと全身病だって言われているんですね.私はいきなり全身転移でしたが,乳がんの場合は,皆さんが再発するだろうという思いはあるわけです.そもそも,がん細胞はがん患者が持っている細胞なんだから,がんを治そうとする考え方自体をやめればいいんです.早期発見,早期治療したから安全とは思わずに,色々いいものは取り入れてやっていこう,どうせいつか再発するかもしれないから,という気持ちになっていくことが1つです.逆に,再発するかもと思って検査ばかりするから,検査で早く見つかってしまうことで再発が早まるんじゃないかと思うんです.だって検査を受けるのも嫌だし,悪い細胞が出たらどうしようと心配しながら検査してから結果がわかるまでの数日間をドキドキして過ごすのががん細胞を増やすのではないか思うんです.最近よくCT検査の被曝がよくないという情報もあるし,そういうことを含めるとバランスが大切なのです.ひとたびがんと診断がつけられたら一生お付き合いと思い,どの時点からが再発とか,どこからが全身転移とか考えないようにする,発想の転換が自分を楽にすると思うのです.要は気持ちの問題です.素人なので医学的には間違っているかもしれませんが,すみません.

田辺:いいえ.おそらく,そういう答えが返ってくるだろうと思いながら絵門さんに質問しました.先程,タバコだけはやめてくださいというお話がありましたが,タバコについてもいろいろ記事が書かれていて,タバコによって肺がんになるのはもう揺るぎないことだと,我々は思っていますが,残念ながら皆さん,必ずしもそう思っていらっしゃらない方もいます.いくつか質問があるんですね.例えば「ご主人は30年間,超ヘビースモーカーでしたが,ここ10年ほど禁煙しています.それで肺がんになりましたが,喫煙との因果関係はありますか」という質問ですが,超ヘビースモーカーを30年やっていたということですから,どうでしょう.それから「喫煙30年でしたが10年前に止めました.肺がんになる確率は全く喫煙しない人と違うんでしょうか.」という質問もありますが,みなさんまだ判っておられないのかも知れませんね.澤先生,どうですか.

澤:何年止めたときに肺がんの危険が何%減るという正確な答えはないですが,遅くからでも禁煙した方ががんになりにくいと思います.ただし,10年禁煙したから,それ以前の30年間の喫煙の罪が消えるかというと,そんなことは決してないのです.もちろんできるだけ喫煙しないようにしていただきたいのですが,過去に吸っていれば止めて10年経ってもがんになることはあり得ます.

田辺:はい,そういうことですから,タバコはなるべくすぱっと止めましょう.

キャロライン:ちょっとコメントしていいですか.私が思うことは,喫煙者へのメッセージとして「もうタバコは止めましょう,禁煙しましょう」ということです.もうひとつ大事なこととして,たとえ禁煙しても,全然タバコを吸ったことのない人と比べると,タバコを吸ったことのある人は肺がんになるリスクが高いということです.さらに大切なメッセージとして,喫煙していて禁煙できなかった,だから肺がんになったとしてもそれは自分のせいではないのです.タバコで中毒性の物質を吸ったから死ななければいけない,とういわけではないのです.10歳台の人でもこの病気になることはあり得るのです.

絵門:私は,6リットルの胸水を抜いた後,胸膜癒着術をしているので,天気の良くないときには息苦しかったりします.そうなってからは,本当に,10m前を歩いている人のタバコの煙も苦しいんですね.だから,タバコを吸っている本人は,気持ちも落ち着いて免疫力も上がって,ひょっとすると長生きするかも知れません.だけど周りのタバコを吸わない人たちはがんになってしまう可能性もあるということを考えたら,「加害者になるのはいけないからタバコはやめよう」って思っていただけたらなあ,と思います.ですから,タバコは私にとっては本当に辛いので,レストランに行っても禁煙席がないと本当に苦労することだけはお伝えしたいなあ,と思います.

田辺:はい,ありがとうございました.そういうことなんです.それから抗がん剤のことなんですが,先程も抗がん剤のお話が講演の中でもありましたが,いくつか質問があります.「抗がん剤はどの程度の効果があるのでしょうか」ということですが,これは先程,根来先生の話の中で,効くんですよという答えがありました.それからイレッサという薬について「3年前肺がんになりイレッサという薬を服用しています.この薬は長期間服用してもよいのでしょうか」という質問もあります.抗がん剤については根来先生が詳しくお話になりましたが,

中村先生,追加はありますか.

中村:抗がん剤の効果については,根来先生がおっしゃいましたように,完全に治してしまうほどの力はめったにありません.しかし,中には抗がん剤だけで治ってしまう方もいらっしゃいます.ただ,私たち専門医が「有効」とか,「効く」という言葉の意味と,皆さんが受け止める”有効”とか”効く”という言葉の意味には大きなずれがあります.私たちはこれくらいの大きさのがんが,半分以下の大きさになって,その状態が4週間以上続いた場合に「有効」といいます.今,世界保健機構では,すこし定義が変わってきていますが,いずれにしても,その程度の力です.しかし,皆さんが有効と聞いたときには,”治る”と受け取ると思います.ここで面倒なのは,マスコミが関与しますと,我々の言葉で「有効」と報道してしまいます.「有効な抗がん剤」と報道されることによって,皆さんは期待の度が過ぎてしまうということが起こってきます.私たちが今やっている治療,そして研究の舞台となっているところでは,もちろん有効な抗がん剤を一生懸命探していますし,有効な抗がん剤の組合せで少しでも小さくしようと努力していますが,治せる可能性は,特に非小細胞がんIIIB期,IV期になってきますと数えるほどしかいらっしゃいません.それから,抗がん剤の延命効果ですが,先程絵門さんが「予後のことは知りたくない」とおっしゃっていたんですが,予後については個人個人によって非常に異なります.延命効果といっても,これは統計の話で,100人の方が同じ治療を受けても,運の悪い方もおられれば,長生きされる方もいて,時間とともに少しずつ亡くなっていかれます.こうして少しずつ亡くなってきて50番目に亡くなった方の期間をもって中間生存期間といい,平均生存期間と大体同じです.この期間を代表的な数字として挙げることが多いのです.ですから寿命1年といわれても,1年たった時点で,まだ半数の方が生きておられるのです.さらに,より長寿の人生を歩まれる方もでてきます.そして医者というのは臆病ですから,悪い方から先に話をします.1年以内に半数の方が亡くなられますから,と説明するとちょっと印象が悪くなります.余命1年といわれた方たちが,1年間生存して,1年経ったときに皆さんが同時に亡くなるなどということは,絶対にありえません.ひとりひとりの患者さんの寿命を予測することは,いかに医者といっても全くできないのです.ですから私たち医師の持っている情報と,患者さん皆さんが求めていらっしゃる情報の言葉そのものの意味が異なるものがたくさんあるのです.それをどうにかして翻訳していける方向に持っていきたいと,ホームページ「エルネット」でやっていることです.

江口:イレッサに関しては,先程根来先生が分子標的薬としてお話になられました.私たちが注目しているのは,今までの抗がん剤と副作用の面で随分違いがあるということです.やはり,同じような副作用のある薬を併用するのは,なかなか難しいんですね.この場合,副作用が2倍,3倍になって出てくる可能性があります.それに対して,副作用の違う薬であれば,副作用が重症化せずにもっと効果が期待できるのです.イレッサも,そのような薬のひとつです.ただ,イレッサの場合は発売されてからまだ間もない新しい薬ですので,長期間使った場合にどのような問題が起こってくるのかは,いまあちこちの病院で経験しつつあることなのです.このご質問には,我々はまだ直接的なデータを持っていないのが現状です.ただし,経験的にいえば,中止しなければならないような大きな副作用がなくて長いこと使っている,1年以上使っている患者さんはあちこちの病院にいらっしゃいます.

田辺:それから,イレッサについては,最近,薬の効き方と遺伝子の関係が取りざたされて,遺伝子を調べれば薬が効くのかどうか判るということが言われていますが,そういう可能性は高いのですね.これは,まだほとんどの病院ではできないんでしょうね.

江口:これは日本の中でも,例えばWJTOGでも研究しているのですが,最近の新聞報道は,極めて最新の研究成果でして,一般の病院ではまだ遺伝子を調べてどれだけ効くのか予想するところまではできていません.今後は,おそらく日常的に検査をして,その方にあった薬を,その方にあった量を選ぶことができるようになると思います.

田辺:先程の根来先生の話から,中村先生,江口先生のお話も総合して,この薬の効き方も相当期待していたのが,少し期待が下がったような印象がありました.でもそういうことを経ていろいろ進んでいくんだなと思います.
 それから,次は絵門さんが得意の分野ですが,サプリメントの質問がたくさん出てくるんですよね.「父が肺がんで手術をしました.退院してからも元気で,今は健康食品のアガリクスを飲んでもらおうかと思っていますが,商品がたくさんありますが,商品毎に少しは違いがあるのでしょうか」という質問があります.それから「サプリメントの効果およびその事例,本当にサプリメントというのは効果があるんでしょうか」と疑問を持っておられる方の質問があります.

絵門:講演で最初に話したWさんは余命1年と言われながら,現在12年になりますが,やはりいろいろなものを試されていますね.そして彼がいろいろ試して残っているものと,私自身がいろいろ試して残っているものと,全然種類が違うんです.彼のアドバイスで試したけど私にはあわないとか,あるんです.私は思うんですが,周りを見渡してみて,手術で取りきれないようながんが,いろいろ試してみて治まってしまったんですよという人がいて,会うなりいろいろ私に勧められたりします.するとサプリメントをやっているほうがいいというのではなくて,「そういうことを何でもして生き残ってやろう」という意欲のある人が長生きしているケースがあるのです.一番大事なのは気持ちで,抗がん剤が一番効くと言ったってせいぜい25%程度なので,抗がん剤だけに頼るのではなくて,「抗がん剤も利用させてもらうけど,他にも方法があるはずだ」と思う心の持ち方の方が大事なんじゃないかと思います.サプリメントもいろいろでてきていて,それを研究していらっしゃる西洋医学の先生方もいらっしゃるから,そういうものの中からいろいろ取り入れるのはいいと思います.私の場合は,固形のいろいろ入ったものより,液体型のものが好き,とかありますが,それもみなさんが自分で選ぶべきものだと思います.10人中2人に効く薬にたとえれば,抗がん剤の場合は20%で有効だというデータがありますが,サプリメントの会社は,2人に効いたということはあっても,「残りの大半の人には効きませんでした」なんて言うことを決してしませんから注意してください.西洋医学の抗がん剤では2人に効いて,残りの8人には効きませんでしたと最初に教えてくれますが,サプリメントの会社は効いた2人のことを大々的に宣伝するだけですから,そこで大きな勘違いが始まるんです.また副作用がないということを大きなうたい文句にしていますが,これも大きな間違いで,私は言われるままに固形のサプリメントを飲んで肝臓がバンバンに腫れてしまった経験があります.これは副作用以外の何者でもない,といえます.ですから,サプリメントも,抗がん剤と同じように,取り入れようか,どうしようかよく考えて選ぶことが大切だと思います.

澤:絵門さんが公式見解に近いことを説明していただきましたので追加することは少ないんですが,やはりサプリメントというのは薬と違って,正確なデータが我々に提供されていないんですね.データを提供しようにも,サプリメントの会社がそのようなことを研究していないのです.サプリメントの会社に,サプリメントを飲んだときに,どのように吸収されて,どのような成分が体の中に残るのですかと尋ねても教えてもらえません.教えてくれないのではなくて,食品会社には教えるようなデータを持ち合わせていないのです.絵門さんがいわれたように,サプリメントががんにいい方向に効くばかりではなく,悪い方向に副作用としてでてくるという報告も随分出てきました.副作用だけではなしに,ヨーロッパでの研究では,本来がんの治療に使っている抗がん剤の効果を落としてしまう成分がハーブ(植物)にあるということまで判ってきました.お使いになるのは,あくまで「自己責任」なのですが,よーくいろんな話を聞かれて,調べられてからお使いになるのがいいと思います.ただ,唯一の利点は,「信じることは元気の素になる」ということです.

田辺:なるほど,「自己責任」ですか.病気も戦場ですからね.竹中先生,先生は経験の豊富な臨床医ですが,自分でがんを患って,サプリメントなどの健康食品は自分で使われたのでしょうか.

竹中:いいえ.私は抗がん剤も嘔吐のため1週間で止めました.実は,何も使わなかったのです.そうしたら親しい友人の医師がやってきまして,何もやらないのは精神的によくないので,丸山ワクチンなら副作用もないからやったらどうかと勧められました.そこで丸山ワクチンを始めたのですが,1日おきに自分で注射をするものですから,痛いんですね.それで1ヶ月ほどで止めてしまいました.それ以来,何もやっておりません.

田辺:はい,何か信念を持ってやらなかった,というわけではないですね.たしかに,いろんな考え方がありますが,どうでしょう.峰岸さん,患者さんはお医者さんには,健康食品を飲んでいるとは言いにくいでしょうけど,看護師さんには相談することが多いというような話を聞いたことがありますが,どうですか.

峰岸:私も,肺がんの研究で患者さんに会ったときに,「実はこういうものを飲んでいるよ」と聞いたことがあったので,患者さんに会うたびにどういったものを使っているのですかという質問を入れるようにしましたら,本当にたくさんの患者さんが,中には終末期の患者さんもいたのですが,家族の愛情がサプリメントに込められているので,患者さんにとってはサプリメントを飲むことが苦痛なのに,家族の愛情に応えるために無理をして飲んでいる場面もありました.そのような場面を見て,看護師としてどのように対応していくかよりも,研究者としてどのようにサポートしていったらよいかというふうに関わってきました.ですから,患者が内緒でサプリメントを飲んでいることを見逃すことができれば見逃すというやり方をしていました.家族が愛情の表現の1つとしてサプリメントを患者に飲ませ,患者も飲むのが辛くても家族の愛情に応えようとする,コミュニケーションの手段としてサプリメントが使われていることがあります.

田辺:キャロラインさん,アメリカもサプリメントは盛んですよね.

キャロライン:確かに,米国においてもサプリメントは大変人気があります.またサプリメントというのは規制当局からの規制を受けません.米国においては食品医薬品局が薬品に関しては規制をしているのですが,メーカーが市場に出したいと考える薬剤に関しては徹底的な規制をかけてきますが,サプリメントに関してはそういった規制は全くありません.患者グループあるいは医師の対応はどうかというと,患者さんがサプリメントを使ってみたいという希望があれば,医師は患者の希望に対して十分な理解を示します.むしろ患者がどういったサプリメントを使っているのかということを医師に報告さえすれば,医師は,「どうぞ使ってください」という対応を取るわけです.患者さんがどういうサプリメントを使用しているかを医師に報告することによって,もし抗がん剤治療に悪い影響が出るものが入っていれば,止めなさいと指導するわけです.そういった意見が出せるような状況であれば,サプリメントは使ってよいという姿勢です.現在,米国においては腫瘍医といわれるがんの専門医は総合的,統合的な治療がいいと考えるようになってきています.これに関しては,西洋医学で使われる薬だけでなく,代替医療も組み合わせて,ひとつの総合的なアプローチをしていこうという形に変わりつつあります.M.D.アンダーソンがんセンターは,米国でも最も先進的ながんセンターとして知られていますが,そこで言われているのは,患者さんの3分の2はこういった統合的なアプローチを用いていきたいと考えています.これは,サプリメントだけではなく,抗がん剤以外の治療とその他のものを組み合わせていこうということです.

絵門:今の段階では,患者レベルで統合しなければいけないですね.やはり,私たち患者の願いとしては,通常療法や先端医療をきっちりやっておられる先生方に,もう少しそういったところを知ってもらって,通常療法では打つ手がなくなった場合に,「もう打つ手はありません」という言葉ではなくて,もう少し別の方法も取り入れてみるといいかもしれないとか「あなた自身がなにか情報を見つけてこれば相談に乗るよ」というふうに希望の光を与えてもらえれば,抗がん剤は10人中2人に効くけど,代替医療は100人中1人しか効かないかも知れないけど,その1人に当たるかも知れない可能性を持たせるようにして欲しいと思います.私の主治医も,講演ではサプリメントはがんに効かないという話をしながら,私の病室に来てサプリメントがいろいろあるのを見つけると「これは何,効きそうだね」みたいな言い方をしてくれました.やはり,そこが大事だと思うのです.今の先生は,サプリメントをみて「そんなの効かないよ」と顔に出してしまうし,看護師さんも,どちらかというと科学的なデータがないものは,という顔をされるけど,副作用のような害になる面だけはおさえてもらって,そうでなければ「患者が高いお金を出して買ってきたものだから,それを半減させるような顔をしないでよ」とお願いしたいです.

田辺:江口先生,お願いされていますが,どうですか.

江口:そうですね.ただ第一線の西洋医学をやっている先生方はなかなか,そういった研究をする時間がなくて,確かに代替療法とか漢方薬について勉強する暇がないんですね.私が思うには,それぞれ専門分野に人たちが集まって,チーム医療のような形で,統合医療を専門にしている先生方と抗がん剤を使っている先生方とが,お互いの知恵を出し合ってひとりの患者さんを診ていくような体制を作っていく必要があるだろうと思います.
絵門:ある先生が「わからないことをわからないと言えないものだから,みんな怒っちゃうんだよね,効かないよって言っちゃう先生が多いんだよね」と言っていたのですが,せめてわからないことはわからないと言って欲しいですよね.わからないと言ってもらえれば,患者の方で,自分で調べなければいけないということが判るけど,先生によっては「こんなもの持ってきて!」とわざという先生もいたりします.それが無くなってくれるだけでも随分いいのにと思います.

中村:肺がんと診断されたときには,家族とともに患者さんに説明するのですが,説明の最後の方に代替医療についても話をします.その時,健康食品は本当にたくさんありますから,それを集めだすときりがなく,その結果として,巨額のお金がかかります.健康食品の会社は医療に責任を持たずに商売ができるというおいしいことをやっていますから,「これは他より高いですからよく効きます」といった乗りで迫ります.そうするとそれを集めだすとものすごい量になります.2番目の弊害として,飲み過ぎると絵門さんほどではないにしても,ものが食べられないほど,中には丼に2,3倍飲む人が出てくるんです.これはやはりやりすぎであろうということで,「健康食品を飲むときは必ず教えてください」,ということと,「せいぜい2種類ぐらいが限度でしょう」と,お話しするようにしています.

絵門:それで怒っちゃう先生なら,先生を替えればいいんですよね.私のところにも,カウンセリングでくる患者さんがいるんですが,サプリメントの話をしたら急に不機嫌になって怒ってしまったと相談にこられました.主治医の先生にはいつまでも船長さんでいて欲しいというのが患者の願いだから,患者はどうするかというと,先生の機嫌が悪くなりそうな話は内緒にしてしまうんです.だからこそこそやるから,それこそ抗がん剤の効きが悪くなるようなものをこそこそ飲むんです.

田辺:そこで,先生を替えたいという相談,別の先生の意見を聞きたいという相談,つまりセカンドオピニオンですね.「肺がんになりました,こういう治療を言われました,私は手術を受けたくないんですけど,本当に手術が必要でしょうか」ということを,別の先生に聞くセカンドオピニオンを,病院でも受け付けるところが増えまして,昔ほど患者の側がおっかなびっくりで頼むことは無くなりました.このセカンドオピニオンをどうしていくかについて,澤先生,どうでしょう.

澤:いま田辺さんがおっしゃったように,今は多くのがんを専門とする病院は,セカンドオピニオンを十分受け入れています.ですから遠慮せずに言っていただければ,例えばWJTOGでは,私は内科医ですが外科医の話を聞いてもらった方がいいなと思ったときは,同じネットワークの外科の先生をご紹介できますし,WJTOGが信じられないという場合は,別のグループの病院を紹介することができます.ですから,遠慮なくどしどしと「セカンドオピニオン」を聞きたいと言っていただければよろしいかと思います.ただし,われわれも外来診察では1日100人ほどの患者さんを診察するんですよね.ですから1人の患者さんに割ける時間というのは限られています.ノウハウとして,予め予約を取ってから行っていただくとよろしいかと思います.それぞれがんを専門にしている病院はインターネットでも,各病院のホームページで何々先生は何曜日の何時に外来診察をやっているというのが判りますから,電話をかけて予約をとっていただくのがよろしいかと思います.

中村:澤先生のおっしゃったとおりなんですが,最近気になっておりますのは,はじめから転院目的のことをセカンドオピニオンと称して,専門病院に行かれる方がおられます.これは言葉が違います.先程も他の医者に診てもらいたいということをおっしゃいましたけれども,それはセカンドオピニオンではありません.それは転院希望なのです.転院希望は転院希望でそれは正当な権利ですし,申し出るのはよろしいと思います.一方,セカンドオピニオンといいますと,本来の医療行為ではありませんので,保険点数がつかないという状況があって,病院によって扱いが色々違います.ですから,その違いを誤解しないようにしてください.転院希望であれば,家から近いところがいいとか,是非この医者に診てもらいたいという希望があるのでしょうから,はっきりと申し出る方がよいでしょう.それからセカンドオピニオンの場合,いきなりでなくてアポイントを取ってこられても,胸のレントゲン,胸のCT,腹部のCT,脳のMRI,骨のシンチ,それから,その検査に関する解説書,場合によっては病理標本を持ってこられても,あなたの意見はどうですかと30分で応えよと言われても困るんですね.これはそう簡単に結論が決まるものではありません.中には先に資料を送ってもらってグループで相談するような病院もあるようですが,簡単に答えの出るような問題ではないと思います.ですからこそ,セカンドオピニオンを求めるわけですし,くれぐれもそのあたりをご留意ください.行けば簡単にすべて説明してもらえると思ってもらっては困ります.いきなり「私のがんはどう思われますか」という質問のされ方をなさるかたもおられるのですが,これはちょっと行き過ぎでないかと思います.一番大切なポイントは,その治療法を選択すべきかどうか,これならばかなりの正確さで答えることができると思います.どう思うかということでセカンドオピニオンを求めるのはいけないと思います.

田辺:竹中先生は,多分そういうことが集中する1人ではないかと思いますが.

竹中:私は3年やってきまして400人を越す方の相談を受けたのですが,私が最初セカンドオピニオンと考えていたのは,診断とか治療の方針について,主治医からの説明がそれでいいのかという質問が多いと思っていたのです.ところが,それが違いまして,約半数は診断も権威のある病院で確定していまして,治療もできるだけのことはやったが,それでも再発したが,これから本当にやっていいのかどうかとか,これからどういう選択をするのが賢明であるのか,といった死生観がからむような相談が非常に多いんです.ですからセカンドオピニオンというのは診断と治療に限ったものではなくて,その人その人の生き方の基本的な問題に関するものが非常に多いので,受ける側もそれに対応できるだけの知識なり,人間性が要求されるのだろうと考えております.

田辺:ありがとうございました.色々と激論を闘わせている間に時間がなくなってきました.これで閉めたいと思いますが,江口先生にまとめていただいて終わりたいと思います.

江口:まとめといっても,会場の皆様とこういった話を伺っていて,今日答えの出る問題ではないかも知れませんが,今後ともWJTOGとしましても,こういった企画を毎年実施していきたいと考えています.是非,いろいろなご質問,ご注文をいただいて,がんの患者さんのためにどういう支援ができるかということを,私たちの組織として考えていきたいと思います.今日は,本当にどうもありがとうございました.

田辺:今日は,キャロラインさんにはわざわざワシントンからおいでいただきありがとうございました.また同時通訳していただきました小松さん,石野さん,ありがとうございました.

個人または病院で患者さんのために情報提供するために利用するのは構いませんが,書籍,雑誌等への蔵書の無断転用はご遠慮ください.


WJTOG市民公開講座収録ビデオ配布中!!

WJTOGではできるだけ多くの皆さんにがん情報を提供すべく,市民公開講座のビデオを作製し配布中です.

(平成16年9月1日)